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プロローグ
桜の下、美冬は謎の少女と出会う(更新日:2017月1月21日)
1. 月と踊る
二人は、他の人には見えない敵――イレギュラーと戦う。(更新日:2017月1月22日)
2. 追憶―――飛ぶ鳥
時は一年前、ちょうど今の季節にさかのぼる。 日常の景色を塗り替える幾重の叫び声。その叫び声に呼応し、 周囲はざわめきで支配された。 普段は葬列を思わせる人の波が魂でも抜かれたように一様に立ち止まり、空を仰ぐ。 「……」 […](更新日:2017月1月22日)
2-2. Chaser&Death
 駅から数分歩いた所にある繁華街は、 今までの騒然とした雰囲気が嘘のように静かだった。 離れた位置から無数のサイレンは届いているものの、行き交う人々の興味は薄い。 この周辺は風俗店が数多く立ち並ぶ界隈で、 今の時間帯はシ […](更新日:2017月1月22日)
2-3 First impression
「あたし、何してんだろ」 立ち尽くした美冬は、買い物袋を持ったままで呟いた。 背には緑ヶ丘駅から吐き出される雑踏。 自分を避けるように追い抜く多くの人影を見て美冬は慌てて歩き始める。 五条駅より電車で四分。 学園都市とし […](更新日:2017月1月22日)
2-4 Engage
肩で息をつく真雪に視線を向け、 ジャケットから取り出した真紅の手袋をきつくはめる。 「ねえ、聞きたいんだけど」 二つ重なって響く階段を下りる音と遠くに聞こえる地響き。 「この辺でやれる場所、ない?」 「やれる場所?」 「 […](更新日:2017月1月22日)
3. 天使のいる街
跳ねるように歩く度に髪やプリーツスカートが軽やかに揺れる。 夕暮れの駿河通りは、まるで夜が来るのを恐れるように人々が早足で通り過ぎた。 熟れた赤い色で染まる空の下、街に灯りが灯りはじめる。 「ちっきしょう、思い出しただけ […](更新日:2017月1月22日)
3-2 Wheel of Fortune
「親父、ちょっといい?」 ダンデライオンが比良坂事務所の応接セットに座っていると、頭上から声が降りてきた。 声の方向を見上げると、傍らに真雪がコーヒー店のカップを持って立っている。何かを思案しているのか、硬い表情をしてい […](更新日:2017月1月22日)
3-3 彼岸
19時20分。 迷路のような住宅地に響く靴音が二つ。 どの家にも灯りがともり、人の気配を感じる。 夜の闇はどこにも等しく訪れ、すべてを包んでいた。 「場所、分かる?」 美冬が隣を見上げた。 声音は普段通りを装うものの、ど […](更新日:2017月1月22日)
3-4 beginning of the end
「だ、誰か! 誰か救急車!」 怒号や悲鳴が飛び交い、辺りは騒然とした。 足音が幾重にも重なって、せわしなく動き回る 血しぶきがはねる壁、静かに広がる血の海。 周囲の空気に混乱と緊張が混じる。 チャリオットは自分の背後の騒 […](更新日:2017月1月22日)
4. Hide and Seek
「美冬、何度も言うけどな」 真雪はスティック状の香に火をつけながら、ため息混じりに言った。 香の先に蛍のような火がともる。 まっすぐ上へと立ち上る緩やかな煙と共に鼻腔をくすぐる森林の香り。 「死神の仕事は直接お前とは関係 […](更新日:2017月1月22日)
5. TRIAD
比良坂事務所のドアを開けると、そこには不気味な沈黙があった。 いつもであれば、事務所にいる誰かしらの挨拶が飛んでくるはずだが 今日に限って言葉をかけてくる者はいない。 「おはよーござまー……って、留守?」 ドアのノブに手 […](更新日:2017月1月22日)
5-2 omen
五条村雨線 緑が丘駅。 ちょうど学生の帰宅のピークなのだろう。 駅周辺は多くの学生で溢れ、花の咲くような賑やかな声が耳に届いていた。 「これは何だよ」 真雪は人の流れに逆らうように歩く。 手には魚肉ソーセージの赤いパッケ […](更新日:2017月1月22日)
5-3 鳥は飛び立つ
「何してんだ、ノクティルカ。具合悪いのか?」 怪訝そうな声が響く。 もの寂しい空気が漂う比良坂事務所に到着し、 真雪が見たのはソファに仰向けに寝そべるノクティルカの姿だった。 いつも多くの仕事をこなし、他人に疲れた様子を […](更新日:2017月1月22日)
6.  AFTERGLOW
 気がつけば、全ての景色をオレンジ色で染める夕日は沈んでいた。 あるのは名残を惜しむような残光のみ。 あと数分ほどで、あたりはすっかり暗くなるのだろう。 「樋口センセ、じゃあねー!」 「まだ残ってたのか。気をつけて帰るん […](更新日:2017月1月22日)
7. 花散ル
「美冬っ! 美冬、聞いた?」 「おはよー。由香、どしたの?」 「……って、あんた朝から何でそんなヘビーなモノ食べられんだよ」 チーズかつサンドを手に持った美冬が自分の席に手をつき 身を乗り出す少女に穏やかに笑う。 私立東 […](更新日:2017月1月22日)
7-2 比良坂
いつもと同じはずの比良坂事務所にわずかな違和感を覚えた。 戦闘服とも言えるスーツに着替えた美冬は ネクタイを締めながら辺りを見渡す。 いつもの夜の匂い、窓の外の毒々しい色彩のネオン、笑う喧騒。 整然と並ぶデスクも、室内の […](更新日:2017月1月22日)
7-3 irregular
人の波は途切れる事を知らず、何かに恐れるように先を急ぐ。 それはまるで川のようであり自分達もまたその一部であるのだと。 中央改札を抜け、真雪と美冬は誰かに背を押されるように出口へと向かっていた。 「場所は天野区立岩戸小学 […](更新日:2017月1月22日)
8.  D&D
「なんだよ、真雪のケチ」 面白くなさそうに吐き出された声に真雪はため息をついた。 声の主である美冬はソファに座ってクッションを抱きしめたまま拗ねた表情を浮かべる。 「お前な。遊びに行くんじゃねえんだぞ?」 「分かってるも […](更新日:2017月1月22日)
9.  泡沫
何度目かのため息。 美冬は海のように広がる街の灯りを気が抜けた瞳で見つめていた。 いや、正確には見ていたかは定かではない。 正面を向いているものの、その横顔は何かを考え込んでいる風で。 手すりに手を置き、ストレッチをする […](更新日:2017月1月22日)
10. Dead or Chase
「あー! アブちんだぁ!」 比良坂事務所を出て歩く事五分、風俗街と呼ばれる界隈を歩いていた美冬が 人ごみの中で誰かを見つけたらしく嬉しそうな声を上げた。 まるで街全体が光を放っているようなネオンに彩られた場所。 夜は更け […](更新日:2017月1月22日)
10-2  ENIGMA
ソファに座るダンデライオンは 口元を片手で隠したまま思案し、一点を睨む。 それと向かい合いように座った真雪と美冬は、無言で何かを待っているかのように。 街は深夜と呼ばれる時間。 窓の外には何の変哲もない夜の景色が広がって […](更新日:2017月1月22日)
11. why not?
「メシおごるって言われて牛丼がいいって答えるかね、普通」 丼を持ったまま真雪が眉間にしわを寄せたまま呟いた。 「相変わらず安上がりだな」 「別にいいじゃん。急に食べたくなる時があるんだって。 それに牛丼屋さんって女の子一 […](更新日:2017月1月22日)
11-2 迷子
呼吸の仕方も忘れてしまったのかと思うような息苦しさだ。 今日、何度目かのため息。 美冬は机に突っ伏して、事務机と頬をくっつけていた。 頬に硬く冷たい感触が伝わる。 体温を少しづつ奪われていくのが分かった。 視界には窓越し […](更新日:2017月1月22日)
12. 夢を見る才能
真雪がソファベッドに寝転ぶと視界に広がるのは白い天井。 何もないはずなのに、つい見つめてしまう。 どこか憂いを漂わせた瞳がゆっくりと瞬いた。 「よっこいしょーいち」 空気が動く気配と共に自分を影が覆う。 視線を動かすと、 […](更新日:2017月1月22日)
13. mayday
向かい合ったソファに挟まれるように備え付けられたテーブルの上には 書類が散乱していた。 『都内で頻発している突然死の原因はいまだ特定されておらず、厚生労働省は――』 書類をめくる音とテレビから流れるニュースを伝えるアナウ […](更新日:2017月1月22日)
13-2 焦燥と沈黙
時間という物は、まるで河のようだと思う。 常に流れ、同じ物は二つとしてないというのに昨日と何ら変わらない錯覚を覚える。 「ん、なあに?何か用?」 普段は足を踏み入れる事がない、高等部教室棟の3階部分。 3年2組の教室を覗 […](更新日:2017月1月22日)
13-3 tactics
真雪はため息をつくと窓の外に視線を転じた。 四角く切り取られた空の青と、死んだような色のアスファルトの壁。 鮮明な色の輪郭に、違和感さえ覚えた。 こんなに空は青かっただろうかと。 「ノクティルカは出かけたんだね」 何を考 […](更新日:2017月1月22日)
14. 追憶――朔夜
終電間際の緑が丘駅。 誰もいないのではないかと思うほど閑散としており、人影は見えない。 美冬が階段を上る音だけが大きく響いていた。 見慣れた場所であるはずなのに何故か違和感を感じる。 背中に感じる視線。 きっと真雪は改札 […](更新日:2017月1月22日)
14-2 He said...
まるで色が変わったようだ。 目の前の男が滲ませていた狂気は影を潜め、今あるのは『チャリオットという名の何か』 「誰?」 美冬は彼に視線をこびりつかせたままで後ろに手をついた。 それは後ずさろうとしているようにも見えたが、 […](更新日:2017月1月22日)
15. XYZ
天上からの光は、まるで自分達をせせら笑っているかのように。 真雪は月を仰いだ姿勢のままで固まっていた。 『ごきげんよう、僕のかわいい天使諸君。ダンデライオンだ』 耳に装着したインカムから聞こえた声。 動きを止め、耳を傾け […](更新日:2017月1月22日)
15-2 兆し
耳鳴りが脳裏で響き渡る。 何かの音を聞いた気がして振り返るが、そこにあるのは静寂。 動いているのは自分と床に落ちるロウソクの光だけだった。 『レイヴン』 数分歩いた所でインカムが名を呼ぶ。 ノクティルカの声は何かを考えて […](更新日:2017月1月22日)
15-3 Memento mori
インカム越しのやり取りを聞きながら、ドアの近くにたたずむウォークライは空を仰いでいた。 聞こえるのは真雪とダンデライオンの緊迫したやり取り。 自分の背の遠くで行われているであろう光景は想像できない。 あるのは胸騒ぎと、 […](更新日:2017月1月22日)
15-4 花葬
足元から力が抜けそうになるのを必死で堪えた。 呼吸が乱れる。 内側で寒気が駆け巡る半面、怒りで体温が上がるのを感じた。 震えるほど強く握り締めた拳。 自分に向けられた楽しげな視線を今すぐ消す事が出来たら。 真雪は立ちつく […](更新日:2017月1月22日)
15-5 13番目の死神
ドアの閉まる音を一瞥すると真雪は顎を上げ、チャリオットに笑いかける。 見下ろす金色の瞳。 大きく歪む口元は憑かれているようにも見えた。 足元の花を蹴飛ばす仕草に白い断片が楽しげに舞う。 「俺を殺すか、死神」 死臭も花の芳 […](更新日:2017月1月22日)
15-6 ESC
「手配第823号、チャリオット」 低い声が響くと共に、胸元から出した紙をチャリオットに突きつける。 射抜く眼光。 アブソルートは無表情のままで、武器を持ち上げると肩に乗せた。 「エクスキューショナーが一、アブソルート。天 […](更新日:2017月1月22日)
16. Dear.
「本当に覚えてないのぉ!?」 響き渡る甲高い声。 テーブルを隔てて真正面からの拗ねた視線に真雪は、わずかに体をのけぞらせた。 気まずさから逃れようと窓の外に顔を向ける。 美冬が救出され、比良坂事務所に帰ってきてから数時間 […](更新日:2017月1月22日)
17. To Dreamer
起動したノートパソコンが低い唸り声を上げている。 ディスプレイに映し出されたインターネット電話サービスのアプリケーション。 この実態のないプログラムで海の向こうにいる人間と話せる事を いまだに祐一は不思議に思っていた。 […](更新日:2017月1月22日)
18. 花の名前
喧騒を背に薄暗い雑居ビルへと足を踏み入れようとして立ち止まった。 地面に落とされた視線は不思議そうな色を滲ませたまま空へと上っていく。 「何これ」 無意識のうちに言葉が漏れた。 美冬はしゃがみこむと地面に落ちていた一片の […](更新日:2017月1月22日)
18-2 farewell
日差しの強さに5月も下旬に差し掛かりつつあるのを知る。 美冬は地上から吹き上がる突風に咄嗟にスカートを押えた。 ここは『会議室』と戯れに呼ぶ、比良坂事務所の入る雑居ビルの屋上。 「昨日ね、アヴァロン行ってきたんだよ。ギム […](更新日:2017月1月22日)
18-3 コトノハ
『灰燼宛に手紙だって? 一体、誰から?』 耳にあてた携帯電話から聞こえたダンデライオンの声が怪訝そうに問う。 話しながら思い当たる節を探っているのだろうか。 不意に訪れる沈黙。 「差出人は書かれておらず、比良坂事務所気付 […](更新日:2017月1月22日)
19. 今宵、死神とダンスを
他の者は全て眠っているのではないかと思った。 人だけではなく、街さえも。 それほど全てが静寂に包まれている。 このまま黙っていると言葉を忘れてしまう気がした。 かと言って、無闇に言葉を発する事もためらう空気がここにはある […](更新日:2017月1月22日)
19-2. Babylon Under Ground
「な、に……これ」 呆然と前を向いたままで美冬が呟く。 広がっていたのは全てを飲み込む闇と漆黒の天を突き刺そうと伸びるビル群と。 そして人はおろか、車の姿さえも消えたゴーストタウン。 まるで街全体が神隠しにでもあったよう […](更新日:2017月1月22日)
19-3 Raven――5/25 26:36
聞こえない音に耳を澄まし、いないはずの気配に振り返る。 見るものが敵に見えた。 全てが動き出して自分に迫ってくるのではないかという錯覚。 離れた位置にあるはずの大殿が間近に感じるほどの存在感を放つ。 外灯はなく、月明かり […](更新日:2017月1月22日)
19-4 Raptor――5/25 26:48
まるで時計が時を刻むように靴音がリズムを打つ。 後ろに手を組んで空を見上げながら歩く姿はまるで深夜の散歩に見えた。 浮かない表情が前を見つめる。 手には一対のショートソード。 時折、強く握り締めては唇を噛んだ。 「怖くな […](更新日:2017月1月22日)
19-5 Dance with Death Tonight
堪えきれずに漏れる笑い声は静寂を濃くする。 ここにあるのは闇の黒と、血の赤。 そして、エニグマの証とも言うべき飢えた金色の瞳だった。 『死神が目覚めた』 耳元ではノクティルカが呆然と呟く。 不気味なほど静まり返り、誰もが […](更新日:2017月1月22日)
19-6 Blood Dance
「ようこそ、ラストステージへ。待ちかねたぞ、勇者様」 笑う声に足が止まった。 周囲を囲む木々の音が辺りを包み、静寂を濃くしていく。 足を踏み入れた東京タワーの駐車場。 コンクリートで覆われた広い空間が闘技場に見えた。 正 […](更新日:2017月1月22日)
19-7 カーテンフォール
「忘れたよ、なにもかも」 にわかに強く吹いた突風に木々が身を踊らせた。 その音はまるで波。 彼らの間を何も知らない様子で笑って通り過ぎる。 死臭がかき回されるのを感じた。 「そうかよ」 普段はスペースがないほど多くの観光 […](更新日:2017月1月22日)
20. Ordinary World
『世の中の旬の話題をお届けする、フレッシュネス・トピックスのコーナーです!』 夜が更けるにつれて賑やかになっていく繁華街が窓の外に広がっていた。 鮮やかな光と音の洪水が閉ざされた窓の隙間から忍び込んでくる。 そのうるさい […](更新日:2017月1月22日)
エピローグ
その部屋にインテリアらしきものはなく、箱と表現するのが相応しい。 あるのは四方を囲む壁と磨かれたように景色を反射される床。 天井まで届きそうなほど大きな窓からは午前の日差しが溢れていた。 室内に存在する何もかもが白い。 […](更新日:2017月1月22日)
プロローグ
鳥のさえずりが間近に聞こえる。 窓と向かい合って備え付けられた机に向かう少女は、その声のありかを探した。 あどけない銀色の大きな瞳が左右に動く。 見えるのは曇天模様の空と、その隙間から漏れる光の帯。 目を凝らしても甲高い […](更新日:2017月1月22日)
1. 冬、はじまり、君が笑う
『これからの未来を担う、社会の宝であるはずの子供達が被害者となっています! どうか、貴方の隣に目を向けて下さい。そこには数多くの助けを求める――』 駅から吐き出された人々が夜を恐れ、足早に目的地を目指す。 聞こえるのはざ […](更新日:2017月1月22日)
1-2 inner voice
研ぎ澄まされた空気が頬に触れる度に痛みを覚える。 コートの裾や髪を揺らして風が通り過ぎた。 『ギルド発表、22時現在のイレギュラーステータスをお知らせします』 周囲にあるのは、両側から迫るビルの壁面と取り残された外灯だけ […](更新日:2017月1月22日)
2. again
12月5日、東京都霧島区。 アスファルトに囲まれた街は不自然なほど整った印象があり、 そこに生気は存在しなかった。 どこまでもまっすぐ続く車道と、歩道との境目に植えられた街路樹の列。 駅から離れたこの通りは人通りも少なく […](更新日:2017月1月22日)
2-2 彼の幻
ノクティルカはソファに座って書類に目を走らせていた。 目の前に敵がいるような鋭い眼差しが文字をなぞる。 座り直す度に小さく軋む音が生まれた。 だが、それも誰に請われる訳でもなく言葉を紡ぎ続けるテレビの声にかき消される。 […](更新日:2017月1月22日)
3. executioner
エクスキューショナー《死刑執行人》 彼らはその名のとおり、夜毎に人を狩っていた。 裏社会にも守るべきルールと侵してはならない領域がある。 秩序を乱し、一般社会に影響を及ぼしかねない『懸念』を消すのが役割。 ある者は番人、 […](更新日:2017月1月22日)
3-2 黒衣の死神
視線を感じる。 真雪は静寂の中で視線だけを動かして周囲を見渡した。 辺りにあるのは両側にひしめく建物。 そして、時折窓辺に現れるシルエットと複数の視線だった。 おそらく外で聞こえた激しい音と、ただならぬ気配に気付いた人々 […](更新日:2017月1月22日)
3-3 vesper
通り過ぎる風の音は咆哮に似ていた。 線路を挟んだ、対岸の街のネオンに照らされて美冬のシルエットが浮かび上がる。 景色を飲み込む闇の中では、彼女の表情を窺う事は出来ない。 たが、真雪には分かっていた。 彼女は笑っている。 […](更新日:2017月1月22日)
3-4 Tiny Monster
死臭は死に際に命から放たれる物であり、死のある場所には必ず存在する。 此岸の者でなければ感じられない訳ではなく。 得体の知れない不安や、どことなく重く感じる空気――それが死臭。 事務所のある夜見坂本界隈は、それが濃く漂っ […](更新日:2017月1月22日)
4. Heaven
まだ22時であるにもかかわらず、辺りは死んだ静寂に包まれていた。 耳を澄ましても物音ひとつしない。 まるで自分だけが世界に取り残されてしまったような奇妙な孤独感に襲われる。 真雪は自室で、落ち着きのない様子だった。 ソフ […](更新日:2017月1月22日)
5. cross
「今日は雲がすごく近いよ、ダンデライオン。手を伸ばしたら届いちゃいそう」 視界から色彩は消え失せ、全ての物が白に塗り替えられていた。 窓辺に立ち、テディベアに話しかける彼女の髪や服、室内、窓の外の景色―― 目に写るもの、 […](更新日:2017月1月22日)
5-2 kiss &cry
風が唸りを上げて通り過ぎる。 その風の冷たさは痛みを伴うほどで、容赦なく肌を刺した。 予報では、未明から雪になるらしい。 夜でも、分厚い雲が立ち込めているのが分かる。 「珍しいな。こんなクソ寒いのに、ここに来るなんて」 […](更新日:2017月1月22日)
5-3. first snow
テーブルの上の紅茶は、手付かずのまま放置されていた。 柔らかく立ち上っていた湯気はとうに消え、冷え切っている。 木目と白で統一された部屋は静止していた。 音はなく、動くものもない。 あるのはソファに座る二つの人影。 俯く […](更新日:2017月1月22日)
5-4 繋がる
「彼女なら朝一番の便で発ったよ」 事務椅子に座ったダンデライオンは、広げた新聞に目をやりながら 半ば上の空の調子で言った。 「なんでも向こうの支部でトラブルが起こったそうで、人手が足らないらしいんだ。 みんなに挨拶してい […](更新日:2017月1月22日)
6. black or white
雲の隙間から光の帯が伸びていた。 金色の光と厚くなった人の波で、夕暮れの時刻が始まった事を知る。 曇天模様であるせいか、いつもよりも日暮れが早い。 差し込む光が辺りをオレンジ色に染めていた。 闇と逝く太陽の色が混ざり合う […](更新日:2017月1月22日)
6-2 目覚めよと呼ぶ声あり
美冬の指先は震え、瞬きを忘れた目が落ち着きなく動く。 唇が微かに動いているのは、間近で発せられた言葉を繰り返しているからなのだろうか。 自分に注がれる二つの視線に気付いていないらしい。 俯いたまま、顔を上げようとしなかっ […](更新日:2017月1月22日)
7. 繋がる線
「へ?」 マグカップに唇を近付けた状態で、美冬が気の抜けた声を出した。 困惑した視線は、自分の向かい側に座ったワーズワースに向けられている。 夕暮れの時刻、駅近くのコーヒーチェーン店。 窓の外の忙しない人波とは裏腹に、店 […](更新日:2017月1月22日)
01:moonlit night
青い夜だった。 窓を遮るカーテンやスクリーンの類は一切なく、一面に窓が広がる。 そこから差し込む月明かりで、辺りが青く見えた。 弱々しいと思っていた月明かりで濃い影ができている。 星もない漆黒に小さな円が一つ浮かぶ。 ま […](更新日:2017月1月22日)
02: why?
「ただいまー」 真雪が比良坂事務所に戻ってきたのは、あと数分で日付が変わる時刻だった。 ドアが開く音と共に聞こえた溜息混じりの声にノクティルカが書類から顔を上げる。 「おかえりなさい。ずいぶん時間がかかりましたね、いかが […](更新日:2017月1月22日)
03:distance
「うん、さすがノクティルカだな。仕事が早い上に正確だ」 書類を読んでいた所長――ダンデライオンが顔を上げて、 正面に立っているノクティルカに笑いかけた。 眉一つ動かさずに軽く会釈をする死神を一瞥して、再び目を紙面に戻す。 […](更新日:2017月1月22日)

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